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秘伝の書
勝つための技ではなく、退場しないための作法を綴る。
手法はすでに表の蔵書に並んでいる。ここに収めるのは、その手前にあるものだ。資金、規律、心理、相場の変質:本物の生存者だけが向き合った、もう一つの章。閲覧には申請を要する。
✶ プロローグ ✶
〜点と点が繋がり、相場観が覚醒する瞬間〜
相場とは楽器であり、トレードは一つの演奏です。 しかし、ひとつの音を知っただけでは、決して音楽にはなりません。 相場の世界でも、たった一つの理論や指標を覚えたところで、それは孤立した「点」に過ぎず、実戦というノイズの中で容易にかき消されてしまいます。 それでも、焦る必要はありません。 あなたはこれまでの人生で、一度はこんな経験をしたことがないでしょうか。 スポーツのフォーム、仕事の手順、あるいは没頭した趣味の中で。 最初はバラバラに思えた知識や動きが、ある日突然、見えない糸で結ばれたかのように「あっ、こういうことか」と腑に落ちる瞬間。 無数にあった「点」が繋がり、一本の明確な「線」になるあの感覚です。 相場の世界でも、まったく同じことが起こります。 あらゆる理論を学び、地道に自分の中に落とし込んでいく。 やがて確かな「線」が結ばれ、線と線が交わることで相場は「面」としての広がりを持ち始めます。 そして、それをさらに極めていったとき……。 平面に過ぎなかったチャートは、突如として立体的で美しい「構造物」として立ち上がり、あなたは市場の波そのものを上空から俯瞰(ふかん)している自分に気がつくはずです。 最初は意味を持たない単なる「点」かもしれません。 しかし、正しい手順で学び、反復の中で血肉としていけば、誰であっても必ずその点は繋がり、空間を捉える視界が開けます。 知識が感覚へと昇華し、物体の構造自体を俯瞰して見れるようになること。 それこそが、「相場観」と呼ばれるものの正体なのです。
特別な才能は必要ありません。あの「点が線になる瞬間」を信じて、まずは最初の点を打つことから始めてみませんか。
I. なぜ、別の文庫があるのか
テクニカルの手法は、表の蔵書で十分に解いてある。トレンドもオシレーターも、出来高もパターンも、それぞれの章に体系として残されている。 だが、相場で長く立ち続ける者を支えているのは、手法そのものではない。資金管理の重み、規律を保つ作法、自分の心理を疑う癖、そして相場の体質が変わったときに「いまの自分は外れている」と認める潔さ。こうした骨格の話は、軽い気持ちで読まれることを望まない。「裏技」を求めて頁を繰る者には、おそらく一行も届かない。だから、表とは別に綴ってある。
II. 審査制について
この章は、申し込めば誰でも開ける性質のものではない。所定の申請をいただき、当方で内容を確かめたうえで、入室を判断する。手間のかかる仕組みを残しているのは、相場の周辺に蔓延する「夢を売る側」と当文庫を線引きするためだ。煽り、誇大、コピー販売、再配布。そうした使い方を防ぎ、書棚の手入れを長く続けるためのささやかな審査である。
III. 蔵書目録
目録のみ公開する。本文は申請承認後にのみ閲覧できる。
九十九パーセントが退場し、残る一握りに何が起きているのか。手法ではなく、手法の周辺にあるすべてを書いた、長い独白に近い一篇。
98の手法を俯瞰して見えてくる最重要の事実。1取引で失う額を資金の2%以下に抑える計算、プロスペクト理論の罠、そして手法より重要な5つの普遍原則。
世に溢れる無数の売買手法は、突き詰めれば「何を取引し、どんな思想で、何を根拠に動くか」の組み合わせに過ぎない。98手法を7つの型に整理した俯瞰図。
「人間の感情を排除し、機械的にルール通り売買する」という発想。その4工程の構造、検証の手順(バックテスト・アウトオブサンプル・フォワード)、そしてEA・シグナル配信商材を見抜く7つのチェックポイント。
1回の利益は小さいが、1日に何十回も繰り返す超短期売買。トレンドフォロー型と両建てピンセット型の2つの原型、それぞれの手順、そしてスキャルピングが必ずぶつかる4つの壁。
複数の時間軸を階層的に重ねて読む規律。各時間軸が異なる参加者層の会話を映していると見れば、相場の整合性と矛盾が立体的に見える。
ボラティリティそのものを取引対象として扱うための思考枠組み。HVとIVの構造、ボラティリティ・レジーム、ATRベースのポジションサイジングを群衆の感情温度として読む。
ジョン・マーフィーが体系化した、株式・債券・通貨・商品の相互関係を読み解く分析枠組み。単一チャートでは見えないマクロ資金の対話を可視化する。
集積と分散、コンポジット・オペレーターの概念を軸とする相場分析の枠組み。需給・因果・効果と結果の三法則を、参加者構造の解剖図として読む。
J. ピーター・スタイドルマイヤーが1980年代にシカゴ商品取引所で開発した、時間と価格の分布から相場を読み解く枠組み。TPOチャートを参加者の合意と拒絶の地図として読む。
「ある期日に、ある価格で買う(売る)権利」の売買。価格の方向を当てなくても利益化できる独自の性質と、クレジット・スプレッド/カバードコール/ストラドルの3戦略。
相関の高い2銘柄の価格差(サヤ)が平均に回帰する性質を利用する。マーケットニュートラルという概念、5ステップの手順、そしてLTCMを破綻させた「逆ナンピン」の罠。
ガートレー、バット、バタフライ、クラブ。フィボナッチ比で組まれた五点構造を、未来を当てる暗号としてではなく、群衆が自発的に集まる座標系として読み解く。比率の幾何学的起源から、自己成就のメカニズム、そして失敗の構造までを掘り下げる長篇。
角度線の表層にとどまらず、価格と時間を同じ量として読む幾何学装置としてギャンを再構築する、長尺の一篇。スクエア・オブ・ナイン、サイクル、価格時間スクエアの構造を本義から紐解く。
同一資産の過去リターンが将来と正相関する性質を、多資産に分散しボラティリティで均して取りに行く戦略。過小反応とリスクプレミアムという二つの源泉、具体的な数値ルール、そして崩れる条件まで踏み込む。
銘柄群を過去リターンで順位付けし、勝ち組を買い負け組を売る相対戦略。過去12か月から直近1か月を除く古典ルール、期待値の源泉、そして急反発で全てを失うモメンタム・クラッシュまで踏み込む。
分散された株価指数ETFが短期的に行き過ぎると平均へ戻りやすい性質を取りに行く逆張り。RSI(2)・連続陰線・移動平均乖離で買い、数日で利確する。期待値の源泉とエッジが崩れる条件まで具体的に。
寄り付き直後の高安レンジを基準に、上抜けで買い・下抜けで売るデイトレ戦略。情報と注文が集中する寄りの方向性を、具体的な数値ルール・フィルター・資金管理・崩れる条件まで踏み込んで解説する。
前日終値と当日始値の窓を取引する手法。小〜中の窓は日中に埋まりやすく逆張り(フェード)、強い材料を伴う大窓は順方向に伸びやすく継続。判別軸と数値ルール、期待値の論理、取り違えたときの損害まで踏み込む。
インプライド・ボラティリティは実現ボラティリティより平均的に高い。この差(分散リスクプレミアム)をオプション売りで収穫する手法の機序・具体ルール・期待値・テールリスクを実戦的に解説する。
高金利通貨を買い低金利通貨を売り、金利差(スワップ)を日々受け取る。為替が動かなくても積み上がるこのキャリーの機序・具体ルール・期待値・そして急騰で一瞬に飲み込まれるテールリスクを実戦的に解説する。
決算でポジティブ・サプライズを出した銘柄は、その後数週間から数か月、上方へ漂流する。市場が新情報を一度に織り込まない過小反応の代表例。サプライズの測り方、エントリーの数値ルール、混雑による減衰までを実戦目線で掘り下げる。
上昇トレンド中の銘柄が値幅と出来高を段階的に収縮させてベースを作り、出来高増を伴ってピボットをブレイクする局面を取るグロース株手法。供給枯渇とタイトな損切りが生む高いリスクリワードを、具体的なルールと崩れる条件まで実戦的に解説する。
米国株指数の長期リターンは、その大半が夜間(クローズ→翌オープン)に発生し、日中はほぼ平坦という実証アノマリー。なぜこの偏りが生じるのか、流動性プレミアムと需給構造から機序を解き、具体ルール・期待値・限界まで実戦的に解説する。