黄金比から導かれた押し戻しの目安。なぜ多くの参加者が同じ水準を見ているのか、その自己実現的な性質を読み解く。
フィボナッチ・リトレースメントは、トレンド中の押し戻しがどこまで進むかを推定する道具である。直近の安値から高値(あるいは高値から安値)に線を引き、その値幅を一定の比率で区切る。区切られた水準が、押し目買い・戻り売りの候補となる。
その比率はフィボナッチ数列(0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34... )から導かれる。隣り合う項の比は無限に進むと黄金比φ(約0.618)に収束する。だから61.8%という数字が登場するわけだが、重要なのは数学そのものではなく、その数字を世界中の参加者が同じように見ているという事実である。
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| 水準 | 由来 | 性格 |
|---|---|---|
| 23.6% | 1 − 0.764 | 浅い押し。強いトレンドで止まりやすい |
| 38.2% | 1 − 0.618 | 標準的な押し |
| 50% | フィボナッチではない | ダウ理論の「半値戻し」の伝統 |
| 61.8% | 黄金比φの逆数 | 最も注視される水準 |
| 78.6% | √0.618 | 深い押し。ここを割ると転換懸念 |
50%は厳密にはフィボナッチ比ではない。だがダウ理論以来「半値戻し」は普遍的な経験則として扱われ、フィボナッチ・ツールにも組み込まれてきた。理論的純粋さよりも、参加者が見ている水準を載せるという実用が優先された結果である。
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明確なトレンドの起点と終点を選び、上昇なら安値→高値、下降なら高値→安値に引く。「起点」「終点」をどこに置くかで水準は変わる。同じ相場でも、どの波を切り取るかで違うフィボナッチが描ける。この恣意性は、ツールの構造そのものに内在する弱点である。
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上昇トレンドにおいて、押し目がどこまで深く入るかを事前に想定する。
下降トレンドでは戻り売りに対称的に適用する。
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異なる時間軸・異なる波から引いたフィボナッチが、同じ水準で重なることがある。たとえば日足の61.8%と4時間足の38.2%がほぼ同じ価格に来る。この「合流(コンフルエンス)」は、単独の水準より遥かに信頼性が高い。
合流が起こるのは偶然ではなく、複数の時間軸の参加者が同時にその水準を意識するからだ。だから機能する。
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これらと重なるフィボナッチ水準は、強力な反応ポイントになりやすい。
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